使っている人によって同じ言葉の意味が違うと、会話になりません。専門用語でも同じで、たとえば「水質が良くなる」と言った時の水質は、基本的には有機物濃度で判断します。有機物が多いとバクテリアなどの呼吸によって酸欠になり、様々な悪影響が発生するからです。ですから湖にヒシが繁茂することで水質が良くなるはずはないのですが、そんなことを堂々と吹聴する研究者が日本にはいまだにいるようです。
最近は「厚岸湖は湾の閉鎖が地盤の隆起によって起こった」と主張する方がいて、根拠として下記の論文が送られてきました。
その方はこの論文を「隆起(海退)と沈降(海進)を経て今のような地形ができているとしている。」と解釈したそうですが、論文には「厚岸町付近一帯は上部白亜紀層を削剥した隆起海成段丘地帯であるが、その軟弱な泥岩部が隆起後の河蝕によって開析谷となり、これが沖積世初期に起った沈降により溺れ谷となり、さらに海蝕によって幅を広げ、厚岸湾および厚岸湖を形成した」と書かれています。つまり「隆起」した時には厚岸湾自体が存在していなかったわけですから、「厚岸湖は湾の閉鎖が地盤の隆起によって起こった」と主張する根拠にはなりません。この論文の冒頭にはちゃんと、「厚岸湾は北海道東部に位置する、太平洋に面した内湾であり、その湾奥にはバリアー(=砂州)で仕切られたラグーンである厚岸湖が存在」と書かれています。
このように、先方が用語の定義を無視して持論を展開している場合、「そもそも論」を理解してもらうのはとても難しいです。自身に実害がない限り「そう思いたいなら勝手にすれば?」と距離を置くのが一番と心得ています。