国立環境研究所が下記のプレスレリースを発表しました。
著者のひとりが以前にもトンデモない主張を国際誌でしていたので、またかと思って確認したら、案の定でした。
プレスレリースでは「現在も続くブラックバス類の分布拡大には、自然分散だけでなく、ゲームフィッシュとしての人気を背景とした違法な密放流が大きく関与していると考えられ、その社会的抑止の強化が求められます。」とありますが、原著論文にはこのような主張を正当化する内容は、少なくともオオクチバスやコクチバスについては示されていません。
原著のリンクは下記です(無料でダウンロードできます)。
https://doi.org/10.1002/edn3.70292
原著の結論部(p.11)での実際の表現は:
"our results, together with those of previous studies, strongly suggest that human-mediated range expansion has continued"
つまり原著は「人為的な移植(human-mediated translocations)が続いている」と言っているだけです。それがプレスリリースでは「ゲームフィッシュとしての人気を背景とした違法な密放流が大きく関与」という、より強い主張に変換されています。これ自体すでに、原著の主張から飛躍しています。
科学論文としての根本的な問題点(=論理の飛躍)は、在来種との比較がないことです。
この研究が示しているのは、ブラックバスのハプロタイプ分布パターンが自然分散だけでは説明しにくいという状況証拠です。しかし「密放流が関与している」という結論には、暗黙の前提として「自然分散だけなら、このようなパターンにはならないはずだ」という比較基準が必要です。
その基準として必要なのが、在来魚種での同様の解析です。
たとえば、近距離でも遺伝的分化が大きい、あるいは遠隔地に遺伝的多様性が集中する現象は、在来種でも氷河期後の再拡散や水系の地形的なつながりによって生じうるはずです。
ブラックバスと同程度の分散能力を持つ在来魚で同じ解析をしたとき、似たパターンが出るか否かを示さないと、観察されたパターンが「外来魚の人為的移植に特有」とは言えません。つまり、対照群(コントロール)なしに外来種固有の人為影響と断じているという点は、科学的には論理の飛躍です。
彼、またやってしまいましたね(プレスレリースしなければバレなかったのに)。。