米国のサイト「GROW」に、除草剤の飛散(ドリフト)による作物への影響について興味深い記事が掲載されていました。GROWは多様な雑草管理の手法を組み合わせることで、全米の農家が「除草剤抵抗性」の雑草に対抗できるよう支援する、科学者主導の研究ネットワークです。
除草剤が本来の散布対象以外の作物にかかってしまうドリフトは、日本でも問題になることがあります。通常は葉の変形や生育障害など、作物そのものへの影響が注目されます。しかしこの記事で紹介されている研究では、除草剤による傷害を受けたワタにアブラムシが多く集まることが報告されています。
研究者らは圃場で、ジカンバや2,4-Dなどの除草剤によるドリフトを模擬した試験を行いました。すると除草剤による傷害を受けたワタでアブラムシが増加していることが観察されたそうです。その後の温室実験でも、除草剤の種類や曝露量によって程度は異なるものの、アブラムシの寄生が増加する傾向が確認されました。
興味深いことに、グリホサートについては高い曝露量でアブラムシの寄生を増加させていました。もちろん、これはワタを対象とした研究であり、日本の農地で同じ現象が起きることを示したものではありません。しかし、日本でこの記事を読んでまず思い浮かんだのは、畦畔で繰り返し使用されているグリホサートです。
もし同様の現象が起きるのであれば、畦畔へのグリホサート散布は単に雑草を枯らすだけではない可能性があります。畦に散布されたグリホサートによってストレスを受けた雑草でアブラムシが増え、その一部が作物へ移動する可能性はないのだろうかと思いました。
さらにアブラムシは多くの植物ウイルスを媒介することが知られています。もし畦畔植生においてアブラムシの個体数が増加するのであれば、病害虫管理にも何らかの影響を与える可能性があります。また、アブラムシが増えれば、それに対応するためにさらに殺虫剤を散布することになるかもしれません。
もちろん、これは現時点では仮説に過ぎません。しかし今回の研究は、除草剤の影響を雑草防除という観点だけで考えるべきではないことを示しているように思います。
農薬の登録や再評価では、個々の化学物質の毒性や環境中濃度が重視されます。しかし実際の農地では、化学物質は生態系の中で作用します。除草剤による植物ストレスが昆虫相を変化させ、その結果として病害虫発生や追加の農薬使用にまで影響する可能性もあるのです。
今回の研究はワタとアブラムシを対象にしたものですが、他の作物や畦畔植生でも同様の現象が起きるのか気になるところです。